所信表明(令和3年第6回田野畑村議会定例会)

2021年9月22日

はじめに

 本日ここに令和3年第6回田野畑村村議会定例会が開催されるにあたり、今後の村政運営の所信の一端を申し述べます。

 私は、このたび、多くの村民の方々のご支援を賜り村政を担わせていただくことになりました。時代の流れが激しく変化していく中、また、新型コロナウイルス感染症が社会生活に大きな影響を与えている極めて重要なときだけに、責任の重大さに身の引き締まる思いでございます。田野畑村長として、村民の負託に応え、その職責を果たして参る所存でございます。
 村民の皆様、そして議会議員各位のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 私の村政運営の基本的な姿勢といたしまして、選挙戦を通し対話と説明責任が大切であり、「オール田野畑・ワンチームの体制を構築し、ともに豊かで住みやすい村をつくっていきましょう」と訴えてまいりました。
 むらづくりの主役は村民であり、村民の力を一つにまとめることが何よりも肝心であると考えております。各地域でお聴きした皆様の声を大切にし、またお会いできなかった方々とも村民懇談会や自治会、各種グループ等との懇談を通して丁寧にご意見を吸い上げ、村民総参加のもとに政策を立案し、実行するむらづくりを進める考えでございます。

施策の方向性

 これより施策の方向性についていくつか申し述べたいと存じます。

人口減少、少子高齢化対策

 まず人口減少、少子高齢化対策についてであります。

 人口減少は、村民生活のさまざまな分野に大きな影響を与える懸念があります。県内はもとより全国で人口減少が進行していく中、本村だけ人口を増加させることは極めて困難であり、人口減少のスピードを少しでも遅らせる観点で取り組む考えでございます。

 三陸沿岸道路が、本年7月に村内の整備区間が全線開通し、交通事情が飛躍的に向上いたしました。残る普代村-久慈市間も年内開通に向け工事が進んでおり、全線が完成することにより宮古市と久慈市までの所要時間は約30分、釜石市と八戸市でも1時間余りとなり、通勤可能エリアが飛躍的に拡大いたします。
 個々の市町村では難しかった企業誘致も広域圏域から労働力の確保が可能となり、立地環境が大きく改善することへの期待が高まっております。近隣市町村との連携を深め、若者の雇用の場の創出に努めてまいります。

 本村の子育て環境は、給食費を除く保育料や、高校生までの医療費の無料化など、県内市町村に先駆けて取り組んでまいりました。
 また、小学校入学時及び中学校入学時並びに卒業時の祝い金交付も継続し、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用し、今年度末までとして実施している小中学生の給食費の無料化についても、継続に向けてその方法等を検討してまいります。
 さらに子育て環境を切れ目なく充実させるため、生まれた子どもの健やかな成長を願い、保護者の子育てを支援することを目的とした「エンゼル祝い金」制度を創設いたします。本村の豊かな自然と充実した子育て環境の中で、「田野畑村で子育てして良かった」そして子どもたちが成長したとき、「田野畑村で生まれ育って良かった」と思ってもらえるような、むらづくりを進めてまいります。

 本村の令和3年9月1日時点での人口は3,145 人、高齢化率は43.0 %となっております。高齢者の方々が、自宅で元気に安心して暮らせるよう、予防医療や見守り、健康・生きがい対策を充実させ、健康寿命の延伸に努めてまいります。
 生涯現役で働く場としてシルバー人材センターは重要な役割を果たしていることから、業務の充実を支援してまいります。
 また、これまでの人生経験を生かし農林水産物や園芸品、郷土料理を道の駅などで販売・提供していただけるように、高齢者の方々の活躍する場の創出にも意を尽くしてまいります。
 近年、全国各地で高齢者が運転する自動車による事故等が報道されており、本村のような中山間地で移動手段が限られ脆弱な地域は、特にも危惧されるところです。本村の公共交通機関の実情を鑑みますと、通学バスに一般 の方も乗車できる総合バス、他自治体に先駆けた自宅まで送迎する予約型乗合タクシー「くるもん号」が運行されております。これらの運行形態や利用状況等を精査、検証し、村中心部や三陸鉄道駅への接続の利便性の向上を図るほか、運転免許証を返納した方や、乗合タクシーの利用頻度の高い75歳以上の方の利用料金の一部無料化 の実施について検討いたします。

活力ある産業の振興

 次に、活力ある産業の振興についてであります。

 農林水産業は、村の基幹産業であることは申し上げるまでもございません。しかし、第一次産業全般にわたり 担い手、後継者不足が危惧されております。関係団体や生産者等と意思疎通を図り、担い手確保のため、支援制度の充実に努めてまいります。

 水産業においては、田野畑産ワカメの品質の良さと、収穫から加工・流通に至るまでの課題等が、これまでの調査や検証の中で明らかになってきております。生ワカメで出荷するよりも一次 加工して付加価値を高めることによって所得の増加や品質の劣化を防げるほか、漁業者の収穫・出荷作業効率の向上による労働時間の短縮など、数々の利点をもたらす可能性があります。そのことから、漁業協同組合、生産者、買受業者、加工業者、及び販売店等と協議を重ね、「田野畑ワカメ」ブランドの確立を進めてまいります。

 農業においては、酪農畜産業及び畑作も主要な産業となっております。生産性の向上、経営の合理化、近代化を促進させ農家所得の安定と、生産品を活用した新たな特産品開発にも取り組んでまいります。

 また、林業においては、手入れの行き届いていない民有林が多いことから、森林環境譲与税を活用した森林施業の普及を図り、地場産材の生産を推進してまいります。

 観光産業は、裾野の広い産業でございます。新型コロナウイルスの感染拡大により全国各地に緊急事態宣言が発せられているほか、 岩手県においても独自の緊急事態宣言が発せられるなど、観光客や交流人口が激減し、地域経済に暗い影を落としております。県内外の感染状況や、国や県の行動制限緩和の状況等を勘案しながら、田野畑村独自の宿泊割引等の支援策を強化し、観光宿泊客の増加と地域経済活性化につなげたいと考えております。
 4月にオープンした道の駅たのはた「思惟の風」は、村の農林水産物や特産品に付加価値をつけて販売し、観光も含め村全体をアピールする場として賑わいが生まれております。その流れをさらに拡大するため産地直売の農林水産物や加工商品の充実、農林水産体験交流施設「思惟創館」を活用した各種体験交流会などのイベント開催により、交流人口の拡大を図ってまいります。
 加えて、三陸沿岸道路には常設トイレの設置がないことから、利用車両が道の駅のトイレを24時間利用できるよう利便性の向上を図らなければなりません。議会議員各位のご協力を賜りながら、村民の皆様とともに関係機関への要望活動を展開し、緊急避難路からの利用の実現を目指してまいります。

 本村では50年以上も前から第三セクターを設立し、産業振興、雇用確保など地域課題の解決を担い大きな成果を上げてきたところでございます。
 しかし、新型コロナウイルスの感染症拡大や、市況や生産環境の悪化、会社の構造的な問題など、各社とも課題等を抱え厳しい状況にあることから、早期に経営状況を把握し、的確な資金調達や経営支援を行い、健全経営に努める考えでございます。

各自治会の活性化

 次に、各自治会の活性化についてであります。

 各地区とも人口減少、高齢化の進展により、地区内の祭りなどの伝統行事や共同作業の草刈り、日々の小さな助け合いなど自治会活動にも大きな影響を与えており、地区の存続も危惧されております。
 自治会の存続・活性化は、むらづくりの根幹であることから、助成制度の充実や、村道などの草刈り作業の負担軽減を図ってまいります。

持続可能な行財政改革

 次に、持続可能な行財政改革についてであります。

 村の財政状況は硬直化が顕著となっております。今後も人口減少や高齢化率の上昇等も予測されており、行財政改革は待ったなしの課題の一つでございます。
 行政サービスを低下させないように意を尽くしながら、事業の選択と集中、事務事業の見直しなどを徹底し、将来世代に負担を残さない持続可能な行財政運営に努めてまいります。

 また、税収が増える要素が少ない中、自主財源を確保するため、現在の「むらづくり基金(ふるさと納税)」制度に返礼品の送付を取り入れてまいります。
 この「ふるさと納税」制度につきましては、全国的に返礼品競争が激化したこともあり、制度本来の趣旨から逸脱しているとの指摘もございますが、一方で返礼品としての特産品開発による地域経済の活性化や、本村に関心を持つ関係人口の増加など効果も大いに期待できるものでございます。
 返礼品の購入や手数料、人件費など一定の費用は要しますが、村内へ還元される効果が大きいことから、村民、関係者の英知を結集し村の魅力をさらに磨き上げられるよう相乗効果にも意を配る考えでございます。

結びに

 以上、村政運営の基本的な姿勢と、主な施策の方向性について申し述べましたが、施策の推進にあたっては、村民の「和」を常に意識しながら経営感覚をもって臨む考えでございます。
 そして、村民一人 ひとりの個性が輝き、将来にわたって豊かに安心して暮らせる村づくりのため、全身全霊を傾けて取り組む決意でございます。

 村民の皆様、議会議員各位のご支援とご協力を重ねてお願い申し上げまして、私の所信の表明といたします。

 

令和3年9月9日

田野畑村長 佐々木 靖

お問い合わせ

田野畑村役場
電話:0194-34-2111