マンガン鉱床と新鉱物

未知の鉱物へ馳せる夢

田野畑のマンガン鉱床と新鉱物


マンガン鉱石 ばら輝石(桃色の部分)

 田野畑地区と明戸地区にはマンガン鉱山跡地があります。田野畑鉱山は大正15年頃から開発され、昭和30年代前半の最盛期には年間1,000トンを超える精鉱が生産されていたとの記録が残っています。しかしその後は衰退し、昭和48年に閉山になりました。閉山後のズリ(廃石)の中などから鈴木石をはじめとする新種の鉱物(新鉱物)や稀産の鉱物が多数発見され、鉱物学者には著名な存在となっています。

注) 閉山から30年以上が経過しているため、坑道は劣化し、坑道入口への道も不明瞭になっています。また私有地であるため勝手に立ち入ることはできません。

付加体の形成とマンガン鉱物

 深海で海水から沈殿したマンガン団塊を含む堆積岩(チャート)が、海洋プレートの移動によって大陸プレートの下にもぐり込む際に上部にはがれ、田野畑を含めた北部北上山地の基盤(付加体)となりました。付加体中のマンガン鉱床は、約1億年前に近くで活動した田野畑花こう岩体から熱と熱水による変成作用を受け、多様な鉱物が生じました。

岩手県の新鉱物

 地球上の鉱物は約4,500種、国内ではこれまで約120種の新鉱物が発見されています。岩手県内からの発見は北海道とならぶ13種と国内では岡山県に次いで多く、そのうちの次の6種は田野畑鉱山産です。

  • 神津閃石(こうづせんせき)
  • 鈴木石(すずきせき)
  • ソーダ南部石(なんぶせき)
  • カリリーク閃石(せんせき)
  • わたつみ石(せき)
  • 田野畑石(たのはたせき)

田野畑鉱山坑道入口 ※現在は立入りできません。

県別発見数(2011年現在)

順位 発見種数
岡山県 17
2 岩手県(*) 13
北海道
4 福島県 8
新潟県
6 岐阜県 7
愛媛県
8 秋田県 4
群馬県

*なんと! このうち6種は田野畑産鉱物

岩手県内から発見された新鉱物

鉱物名 発見年 産地 鉱物名の由来
吉村石 1961 野田村野田玉川鉱山 吉村豊文九州大学教授の業績を記念
万次郎鉱 1967 軽米町小晴鉱山 渡辺万次郎東北大学教授の業績を記念
赤金鉱 1968 奥州市江刺区赤金鉱山 産地にちなむ
神津閃石 1969 田野畑村田野畑鉱山 神津俶祐東北大学教授の業績を記念
南部石 1972 洋野町舟子沢鉱山 南部松夫東北大学教授の業績を記念
釜石石 1981 釜石市釜石鉱山 産地にちなむ
木下雲母 1981 野田村野田玉川鉱山 木下亀城九州大学教授の業績を記念
原田石 1982 野田村野田玉川鉱山 原田準平北海道大学教授の業績を記念
鈴木石 1982 田野畑村田野畑鉱山 鈴木醇北海道大学教授の業績を記念
ソーダ南部石 1985 田野畑村田野畑鉱山 化学組成上の特徴(ナトリウムの多い南部石)から
カリリーグ閃石 2002 田野畑村田野畑鉱山 化学組成上の特徴(カリウムの多いリーク閃石)から
わたつみ石 2003 田野畑村田野畑鉱山 海王石系鉱物の新種海王の古来和名から
田野畑石 2012 田野畑村田野畑鉱山 産地にちなむ

神津閃石
赤黒色?黒色のガラス光沢の部分(矢印)


鈴木石
鮮やかな緑色をした半透明ガラス光沢の部分

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